映画『たぶん』感想 大衆的な"別れ"の中に確実に存在するドラマたち
少し前の話になりますが、11/14(土)に『たぶん』というショートストーリー映画を観てきました。
「夜に駆ける」でのデビュー以降10~20代から人気を集めている
"小説を音楽にするユニット"YOASOBIの楽曲「たぶん」を映画化した作品です。
そもそもYOASOBIの楽曲には原作小説が存在するのが特徴なので楽曲を映画化したとも、原作小説を映画化したとも言えるような気がしますが...笑
上映期間は1週間かつ全国で上映館が20館ほどしかない40分程度の映画でしたが、漏れなく自分もYOASOBIの楽曲はどれも好きなのでしっかり観てきました。
在住してる大阪でも上映館が自宅から電車で1時間ほど離れたイオンシネマ1つでしか上映しておらず、映画見てる時間よりも移動時間の方が長いくらいでしたね笑
ちなみに自分が観に行った11/14(土)は舞台挨拶の中継もありました。
ということで今回のお話はそんな映画『たぶん』の感想です!
既に上映も終了しているはずなのでネタバレ全開で書きます、ご容赦ください!
3組のカップルの"別れ"を描く物語
映画『たぶん』では大学生、高校生、社会人で1組ずつ計3組のカップルの別れが描かれます。
大学生カップルは原作小説&曲にも登場するカップルで、高校生カップルと社会人カップルは今回の映画で初めての登場でした。
大学生カップル:ササノとカノン
大きな物音で目覚めるカノン。別れたササノが部屋を整理しに帰ってきていた。同棲を始めた時、「私たちは変わらない」そう思っていたのに些細なことで少しずつ"ズレ"を感じ、 別れを選んだ二人。大学はオンライン授業になり、就職活動を控える中、将来を真剣に考えるカノンと楽観的なササノ。どうしてこうなったの?悪いのは彼なのか、私なのか。たぶん......。 (公式ホームページより)
小説でも曲でも描かれてるお話なので結末とか感情の動き方とか諸々は知っているのですが、やっぱり後ろ2つの話と比較してもこのストーリーが1番の「たぶん」なんですよねー
このお話、別れという2人の結末を一旦は受け止め終わったササノとカノンの一時のやりとりしか描かれてはないんですけど、前後の類推が捗りすぎて。
ただただ楽しい日々の裏側で、合うと思ってた根っこの部分が実は合ってないと段々分かっていくの本当に辛いですよね。
しかもそれを面と向かって表にぶつけることはお互いどこか避けてしまうっていう...
セリフにあった「ちゃんと喧嘩できてたらきっとまだ続いてたよ」ってやつ、めっちゃ刺さった。
いや本当にそれなんだわ。
「立つ鳥跡を濁さず」と、部屋を整理しに来て淡白を装って部屋を出ていったササノがマンションの廊下で流す涙が辛すぎる。
あそこに全ての「たぶん」が詰まってるなぁと。
ちなみにササノ役の木原瑠生くんはキラメイイエローですね(急な特撮ネタ。)
良い意味で為朝感は全くなかったと思います。
高校生カップル:川野と江口
サッカー部の川野とマネージャーの江口はビデオ通話をしていた。今頃、最後の大会を迎えているはずだったが、今年は自粛により中止に。努力が報われないまま、憂鬱な受験の話をしていた。通話を切ると川野のLINEにチームメイトから江口が東京へ引っ越すと知らされる。3年間チームと自分を支えてくれていた江口のことを思い、気づくと川野は自転車で走り出していたー。 (公式ホームページより)
この高校生カップルのお話はシンプルに癒し!可愛い!尊い!って感じでした。笑
川野くんは自転車で走り出した後に無事に海岸で相手の女の子に会えるのですが、お互いにもう一歩素直になれず、「好き」という直截的な表現は無いまま引越しという別れを迎えるあたりのいじらしい感じとか、見ててうわーってなっちゃいましたね。
すごく素直で透明感に溢れたストーリでしたが、それだけに却って「たぶん」要素はどこだ?とは少し思いましたが。
でも心がどこか温まる真っ直ぐな切なさはすごく感じました。
社会人カップル:クロとナリ
インテリアデザイナーのナリは彼氏のクロとなかなか連絡が取れず、直接家を訪ねる。インターホンを押すとクロが出迎えるも、玄関にはヒールの靴が。アリサと名乗る女性は編集の仕事をするクロの元同僚。オススメのDVDを届けに来たという。クロのことが大好きなナリは動揺を隠せずその場で言い合いになってしまう。こんなにも好きなのに......。 (公式ホームページより)
依存系彼女のナリがメインのお話。
ナリさんいわゆる彼氏好きすぎ盲目状態で優先順位狂っちゃってるな〜ってのがめっちゃ分かりやすかったですね。
対して彼氏(クロくん)の方がもう本当に良い人でできた人間で...泣
このお話、結局クロがナリさんを振っちゃうんですよね。
「嫌いになっちゃった!?重たかった!?」と分かりやすくヒスるナリさんに対してクロくんが「違う、僕がナリをダメにしてると思う」っていうセリフがあるんですけど、本当にもう...。
あぁ、この彼氏は自分たち2人がどういう状態なのか俯瞰できてて、それを良くないって判断して、自分も相手も傷つくって分かりながら関係を終わりにしようとしてるんだなぁーってのが伝わってきすぎて辛かった。
実際エピローグではフラれた後にナリさんがクロくんに留守電を残すシーンがあるのですが、曰く「あの後すぐに大きな仕事決まって今すごく充実してる!ありがとう!」みたいなことを言ってて。
お前フラれる前仕事とかどうでもいい何なら休み合わせるために転職しようかなとか軽い発言してたくせに!!
そんな清々しそうに人生を進めるナリさんに対してクロくんその留守電聴いた後の表情が本当に...
君は正しい行動をしたのにそんなに沈まなきゃいけないなんて世界が間違ってるよな...って気持ちになりました。マジで。
ナリさん今は楽しくて良いけど落ち着いて自分の人生振り返った時にクロくんに死ぬほど感謝してほしいなホント。
あんたが前を向けてるのはクロくんが君のために傷ついてくれたお陰だよホント。
大衆的な"別れ"の中に確実に存在するドラマたち
舞台挨拶でもAyaseさん(YOASOBIコンポーザー)が仰っていて、核心ついてるなぁと思ったのが
『別れなんて、それに付随する感情なんて、とても大衆的。だけどそこにある良い感じの切なさを描く曲が「たぶん」』
という話でした。
別れを描く中に存在する「たぶん」な曖昧さの表現と、別れを描きつつも、その先にある希望を覗かせていたのが映画『たぶん』という作品だったかなぁと思います。
にしても曖昧を背負い込むのが基本的に男子サイドに見えてしまうのは自分が男子だからなのか、それとも世の常なのか...w
舞台挨拶でナリ役のめがねさんが「この映画を通して別れを前向きに受け入れて生きていってほしい」
と言われてましたが、自分は出会いとか別れとかもっと軽率に扱えるようにしようかなぁって思いましたね。
何だかそういうものに慎重になりすぎながら生きてる気もするので。
映画本体の感想からは少しズレた感想になりますが、少し思ってしまったのが、わりと自粛期間ってのが背景にあって話が展開されていたので、あと一月か二月くらい公開早ければ良かったのになぁと思ってしまいました。
なんだか先週くらいからまた深刻化してきていますが上映されていた週はどちらかというと自粛は緩和ムードが強かったかなと...
あと普段観ているブロックバスター映画に比べるとやっぱり安い映画ではあるなーと。
補完しないといけない描写やカットもそれなりに目につくし、画面の中から予算とか制作面の工面がある程度の濃度で感じられるなーと思いました。
補完するのは作品の性質なとこもありますが。
まぁこれは良いとか悪いとかではなく自分の映画鑑賞の経験の一つとして感じたことですね。
今後のYOASOBIワールドにも期待!
元より"小説を音楽にする"というクロスメディア性に強みがあるYOASOBIの世界に映画という要素が加わって、今後は楽曲でも小説でも「たぶん」に触れるときは映画を見たからこその角度での感じ方があるんだなぁと思うと面白いですね。
同じ作品を様々な媒体での表現を通して触れられるというのが、面白いし、すごいなと。
人間ボーカロイドとも言わしめる歌唱力を持つikuraさん、天才コンポーザーAyaseさんがこれからも創るYOASOBIワールドがとても楽しみです!
これまた余談ですが2021年1月から2期放送が決まっている「BEASTARS」のOPがYOASOBIの新作「怪獣」だったり、Ayaseさんは最近LiSA&uruに「再開」という楽曲を提供していたりでめちゃめちゃ目が離せないですね。
YOASOBIに興味が湧いたという方はYoutubeで全て聴けるので楽曲聴いてみてください!(MVもすごく良い)
各種ストリーミングサービスでも視聴可能です!
小説もmonogatary.comをはじめweb上で読むことができます!
小説集も出てますよ!
僕の感想だけでは「たぶん」の世界を伝えるには貧弱なので是非〜
ここまで読んでくださりありがとうございました!
面白かったという方はスターを送ってもらったり、読者登録していただけると嬉しいです!